路傍の感想文

創作物の感想

2019年に読んだ本

2019年心に残った本の感想

 

・『アミダサマ』(沼田まほかる

 

アミダサマ (新潮文庫)

アミダサマ (新潮文庫)

 

 

産廃処理場に放置された冷蔵庫の中から発見された少女ミハル。住職の筒井浄鑑は災厄の萌芽を感じ取りながらもミハルを引き取ることに。ミハルとの穏やかな時間は束の間、やがて凶事が発生し、集落は邪気に蝕まれていく……。一方、ミハルを救出したサラリーマン・工藤悠人は、ミハルの〈コエ〉を忘れられず、再び〈コエ〉を聴くことを切望する。

 

人間の内側から膿のように溢れ出す醜さを描いたホラー小説。
祖父に対する暴力的な想いの丈をぶつける悠人。犯され殴られながらも悠人を受け入れる律子。二人が生きる世界はどこまでも暗く、願いは届かず、まさに濁世だ。
阿弥陀仏の救済の対象が悪人であるのならば、悠人たちは救われるべき人間だったのだろう。

 「生きるということが何らかの妄想を紡ぎ出さずにはいられないものなら、自分は阿弥陀仏という妄想を選んで生きたことを、よしとしよう」(p338)

 

 

・ 『営繕かるかや怪異譚その弐』(小野不由美

 

営繕かるかや怪異譚 その弐

営繕かるかや怪異譚 その弐

 

 雑誌『幽』の連載をまとめた本。古い建物や物に宿る怪異はファンタジックだが、その対処方法は論理的。『ゴーストハント』のような派手さはないが、ロジカルな謎解きは相変わらず。


印象的なのはこぎん刺しを巡る怪異。生きた証をぐちゃぐちゃにされたらどれほど悔しいだろう。今を生きる者に出来ることは、残された物を尊重し丁寧に扱うことである。

 

 

・『花豆の煮えるまで―小夜の物語』(安房直子

 

花豆の煮えるまで―小夜の物語 (偕成社ワンダーランド)

花豆の煮えるまで―小夜の物語 (偕成社ワンダーランド)

 

 

やまんばの娘・小夜に起こる不思議な出来事を綴る連作童話。様々な体験を通して、小夜はやまんばの血に目覚めていくが、やがて選択のときが訪れる。

 

全編通して物悲しく寂寥感に満ちた作品。いつか訪れる別れの予感を感じながら、小夜は異界の者たちと交流していく。
やがてその不安は最終話で現実のものとなる。小夜が小さな嘘をついたことで、異界と現実の境目を自由に行き来していた子ども時代は永遠に失われてしまう。


後悔しても後戻りはできない。大人の階段を上ってしまった以上、もう子どもには戻れない。
残酷で切ない現実に震える。

 

 

 

・『完訳アンデルセン童話集(一)』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン、大畑末吉訳)

 

 

 出会い別れ、喜びと悲しみ、生と死。様々な想いが詰め込まれた宝石箱のような短篇集。

「幸福の長靴」の強欲な人々。「皇帝の新しい着物」の自尊心と虚栄心にまみれた王たち。滑稽で愚かで、愛すべき人々だ。

 

乙女ゲーム『絶対迷宮 秘密のおやゆび姫』の影響で読んだが、珠玉の物語との出会いをくれたかの作品をさらに好きになった。