路傍の感想文

創作物の感想

ゲーム『おねだりシェアメイト』磯崎亮介ルート感想

「俺は何も変わってないよ。

 今でも、お前のコト好きだし……なんてね」

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高校教師の堺屋あゆみは、事故で他界した姉の夫、甲斐眞太郎が営むシェアハウス「ペルシェ」に引っ越すことに。新生活に胸を膨らませるあゆみだったが、「ペルシェ」の住人たちはあゆみを除いて全員男性だった。紅一点のあゆみのルームシェアの行方は……。

株式会社シュピールのブランドA'sRing より2014425日発売。

シェアハウスを舞台に、高校教師の恋を描く18禁乙女ゲーム。公式ジャンル名は「女性向け恋愛AVG」。

 

 

主人公の堺屋あゆみは私立双葉学園の古典教師で、男子バスケ部の副顧問。

25歳。身長160センチ。明るく元気な性格だが、恋愛には少し奥手な女性。

以前から実家を出たいと考えていた彼女が借りることになったのは、義兄の甲斐眞太郎が営むシェアハウス「ペルシェ」。期待に胸を膨らませ「ペルシェ」のドアを開けたあゆみの目に飛び込んできたのは、二人の男性の姿だった。

かくして、男性二人・女性一人の同居生活が始まるが……。

 

 

初回から攻略可能キャラクターは四名。

あゆみが担当を務めるクラスの生徒で、双葉学園二年生の芹沢陽翔(演:大石恵三)。

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ホストクラブで働く大学生、峰村悠月(演:魁皇楽)。

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悠月の兄で、双葉学園の眼鏡数学教師、峰村逸生(演:土門熱)。

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オーストリア貴族のバイオリニスト、フリッツ・ヴィトゲンシュタイン(演:佐和真中)。

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ゲームスタート時の同居人選択では、この四名の中から二名を指名する。

組み合わせは、「芹沢陽翔+峰村悠月」、「峰村悠月+芹沢陽翔」、「芹沢陽翔+峰村逸生」、「峰村悠月+峰村逸生」、「峰村逸生+フリッツ・ヴィトゲンシュタイン」の五種類。同居人の組み合わせによって、攻略できる個別エンディングが確定する。

 

「芹沢陽翔+峰村悠月」の組み合わせで攻略できるのは、陽翔個別END「桜の木の下で」、陽翔+悠月3PEND「ふたりの恋人」。

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「峰村悠月+芹沢陽翔」の組み合わせでは、「芹沢陽翔+峰村悠月」のENDの他に、悠月END「ずっと一緒」も攻略可能。

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「芹沢陽翔+峰村逸生」の組み合わせは、陽翔+逸生3PEND「3人の秘密」のみ。

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「峰村悠月+峰村逸生」の組み合わせで攻略できるのは、悠月個別END「夢を叶えて」、逸生個別END「永遠の誓い」、悠月+逸生3PEND「3人の世界」。

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「峰村逸生+フリッツ・ヴィトゲンシュタイン」の組み合わせで攻略できるのは、フリッツ個別END「永遠の約束」と逸生+フリッツ3PEND「フリッツからの手紙」。

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三人目の同居人である磯崎亮介(演:ヘルシー太郎)は、芹沢陽翔と峰村逸生の個別END攻略後に指名できるようになる。組み合わせは「芹沢陽翔+峰村逸生+磯崎亮介」のみで、陽翔個別END「プロボーズ」、亮介個別END「復帰戦」、陽翔+亮介3PEND「後悔」を攻略できる。

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シェアハウスの管理人である甲斐眞太郎(演:一条和矢)は全キャラクター攻略後に指名できる。組み合わせは「峰村逸生+フリッツ・ヴィトゲンシュタイン+甲斐眞太郎」のみ。この組み合わせでは、眞太郎個別END「蕾が花開く日」、フリッツ+眞太郎3PEND「恋人達の止まり木」を攻略できる。

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真相ルートや大団円ルートは用意されていないため、好きなキャラクターのみプレイしても問題はない作品である。

 

 

 

磯崎亮介ルートは、昔の恋が再燃するストーリー。

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磯崎亮介はプロバスケットボール選手。25歳。身長183センチ。スタープレイヤーとして注目されているが、今は足の怪我によりリハビリ療養中。

 

高校生のころ、あゆみと亮介は交際しており、あゆみの初めてを捧げたのも亮介だった。しかし、大学進学後、あゆみは教師、亮介はバスケットボール選手の夢を目指すうちに疎遠になり、関係は自然消滅した。

亮介が双葉学園男子バスケ部の特別コーチに招聘されたことで、二人は数年振りに再会する。

亮介「ああ、分かってるよ」

学園の事を思い出し、慌てて言うと亮介は優しく微笑んだ。

その微笑みは、私のよく知っている亮介の表情と少し違った。

今まで知らなかったその表情に、なんだかドキドキしてしまう。

あゆみ(亮介、なんだか大人っぽくなったな)

亮介「それと、呼び方にも注意だろ。堺屋先生」

あゆみ「そうです。本当に気をつけてね」

亮介「あゆみも、俺の事名前で呼ばないように気をつけろよ」

あゆみ「わ、わかってるわよ」

からかうように言った亮介の表情は、昔よく見た知ってる表情だった。

今まで知っていた表情と、知らなかった表情。

亮介が見せるのは、高校生のころから変わらない表情と、大人びた表情。

あゆみの知らない亮介の顔は、離れていた数年間を物語るようで、心をざわつかせる。

男子バスケ部の副顧問と特別コーチというお互いの立場を考慮して一線を引くあゆみと亮介だったが、体育館で顔を合わせるうちに、あゆみは亮介に惹かれていく。

 

 

やがて亮介が「ペルシェ」に入居し、あゆみと亮介の仲はより近付くことに。

学校帰りにスーパーへ立ち寄って食材を買い込んで、「ペルシェ」の台所で一緒にカレーを作ったり、ソファーで寝ていた亮介があゆみを抱きしめたり、と、昔の二人に戻ったかのような時間を過ごすあゆみと亮介。

アメリカにいる時、ずっとあゆみに会いたかった」

亮介は学生時代バスケットボール選手の夢を叶えるためにあゆみと距離を置いたことを後悔していた。自分のことで手一杯だったあのころの二人は相手の気持ちまで気が回らなかった。でも、大人になった今の二人ならば、また恋が始められるかもしれない。

 

そのころ、亮介は「ペルシェ」の同居人で、学園二年生の陽翔を男子バスケットボール部に入部させようと躍起になっていた。しかし、陽翔は何度勧誘されても頑なに断る。

あゆみは陽翔がバスケを憎む理由を聞き出すことに。

幼少期に父親からバスケを教わった陽翔。しかし、父母が三年前に離婚し、母に引き取られた陽翔は、「母が父を悪く言うのを聞くたびにバスケはしてはいけない気がして」バスケをやめてしまったという。

「……ホントは、オレ……バスケがやりたい……!父さんが教えてくれた、楽しかったバスケが、もう一度やりたいんだ!!」

陽翔は蓋をしていたバスケへの想いを吐露し、男子バスケットボール部に入部する。

和解した陽翔と亮介は、「ペルシェ」のリビングで仲良くゲームをするのだった。

 

陽翔の問題が解決したのも束の間。

今度は亮介の足の怪我が悪化する。

練習中に足の痛みを訴えた亮介は病院へ行くが、帰宅後の表情は暗かった。

足の怪我は手術を要する状態で、手術とリハビリを含めて、最低でも半年はバスケットボールができなくなるという。

その身体は小さく震えていて、まるで何かを怖がっているみたい……。

亮介「俺、学生の頃からバスケばかりでさ……バスケをしない日なんて一日だってなかった。それこそ、あゆみとも会わずにバスケ、バスケで……」

亮介「だから、半年もバスケができないなんて怖いんだ……バスケをしない自分なんて俺は知らない」

バスケを失った自分は何者になってしまうのか。亮介の不安な気持ちは、これまでの情熱の裏返しである。高校時代からバスケットボールに打ち込んできた亮介は、あゆみと会う時間を削ってまで練習に明け暮れていた。亮介にとってバスケが生活の全てであることをあゆみはよく知っていた。

揺れる心を理解者であるあゆみに打ち明けた亮介は手術を決断する。

 

手術は成功。亮介は渡米しプロバスケットボール選手に復帰する。

あゆみは双葉学園を辞職し、アメリカの日本語学校で働きながら、亮介を支えることに。アメリカまでやって来た陽翔と一緒に、亮介の試合を観戦する場面でエンディングとなる。

 

 

色褪せた恋が再び輝きを取り戻すまでの過程を描いた亮介ルート。

直感のままに一直線に突き進むスポーツマンで、憎めない性格の持ち主である亮介。

そんな明るい彼にも悩みがあり、後悔があった。情熱を捧げてきたものが失われるかもしれない恐怖に怯えながらも、前進する亮介の姿は頼もしい。

 

あゆみと亮介の恋愛模様のみならず、亮介に敵意を抱いていた陽翔との間に生まれる友情も見所。シェアハウス「ペルシェ」のリビングでじゃれあう亮介と陽翔は疑似兄弟のようである。渡米後も亮介と陽翔の交流が続いているのが微笑ましい。

 

亮介を裏切って陽翔と関係を持つEND「後悔」は、あゆみが優柔不断なばかりに亮介と陽翔の友情を崩壊させる内容である。友情を壊した代償は愛の喪失である。