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ゲーム『あかね色に染まる坂』感想

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アクシデントにより許婚の片桐優姫と不仲になった高校生の長瀬準一。二人に父親が出した提案は、来年までにお互いが恋愛感情を抱かなければ許婚関係を破談にするという内容であった。

有限会社ホワイトローズのブランドfengより2007年7月27日発売。

現代日本を舞台に、財界の権力闘争に巻き込まれた男子高校生の学校生活を描く18禁ゲーム。公式ジャンル名は「ドラマティックADV」。

 

 

主人公の長瀬準一はアミティーエ学園の二年生。学内では三枚目扱いを受けている普通の高校生だ。

ある日、準一は暴漢に襲われそうになっている少女を助けるためにファーストキスを奪ってしまう。

翌日、準一のクラスに転校生が現れるが、その転校生こそがキスをした少女、片桐優姫(演:風音)だった。優姫は片桐財閥のお嬢様であり、知らない間に親同士が決めた許婚の相手でもあった。

最悪の出会いのせいで犬猿の仲になった準一と優姫。準一の父はそんな二人にある提案を出す。それは来年までにお互いが恋愛感情を抱かなければ許婚関係を破談にするという内容だった。

 

 

共通ルートは学園祭開催を巡る一騒動、個別ルートは攻略対象との恋愛を認めてもらうために奮起する物語。

全編通してコメディ色が強く、男性プレイヤーを想定したジョークが飛び交う。攻略対象は「ツンデレ」「兄を慕う妹」「ぶりっ子」などの定型をなぞった記号的な女性キャラクターたちで、漏れ無く全員が準一に好意を抱いている。リアリティよりも「いかに準一が気持ちよくなれるのか」を重視したシナリオとなっている。

個別ルート後半では乗り越えるべき課題が提示されるが、そこで主人公の準一が取った行動は情に訴えることのみ。有効な手段は準一陣営に降った登場人物が齎した策であり、準一は彼らの駒よろしく動き、力任せにハッピーエンドに持ち込む。暗君も軍師を迎え入れると名君になる。狡猾な軍師を味方につけた主人公の前では、手練の財界人たちもひれ伏すしかない。それがたとえご都合主義と謗られるような結末であったとしても、プレイヤーの代弁者である準一の欲望を充足させるためには瑣末な犠牲である。

 

 

①西野冬彦(演:空乃太陽)

準一の同級生。生徒会副会長。頭脳明晰で冷静沈着。二次元文化に造詣が深く、ネオロマンスもマスターしている。*1

 

準一の唯一無二の親友である冬彦。

その正体は錫瀬財閥会長の隠し子で、準一の敵であった(なお実年齢は準一より年上である)。

 

彼の見せ場となるのは、片桐優姫ルートの一幕。

亡き会長の血を引く冬彦は、財閥の後継となる身。冬彦は錫瀬の下に帰る条件としてアミティーエ学園の吸収合併と廃校を提言。錫瀬財閥は強引な手段で廃校計画を実行に移す。

冬彦は準一に全生徒九割の署名を集めるように指示。準一らの働きで過半数以上の署名を得ると、その署名を盾に諸権利を正式に学園に委譲し、錫瀬財閥の圧力からアミティーエ学園を守り抜くことに成功する。

 

さらに、準一と優姫の恋愛を成就させるべく、人肌抜く。

冬彦「おっと。僕を攫うのかと思いましたよ」

準一「冬彦にはこっちを頼まないとな」

財界の大人たちに対抗する手段は、子どもならではの柔軟な思考と、学園生活で培われた確かな友情に基づいた奇策のみである。

 

 

②杉下清次郎(演:青島刃)

アミティーエ学園の教師。準一の担任。

元暴走族。関東から北日本までの暴走族と愚連隊を率いる極東連合の総長を務めていた。現在は準一の父の部下。

 

「椎名の腰つきが大人の女になっている」等、時折品性が疑われる発言もするが(青島刃声帯でなければこの時点でアンイストールしていた)、生徒たちの意向を汲む頼もしい教師であり、正念場においては準一を叱咤激励する良き助言者である。

 

椎名観月ルートでは、椎名との交際が反対されて家出した準一に

「お前たちが今ピンチなのは単純に負けて逃げてるからだ」

「俺の教え子としちゃあ、失格だな」

と、指摘。

片桐優姫ルートでは、

「片桐は俺の教え子だ。

 そしてここは俺の学校だ。

 連れて帰って来い、準一」

と、発破を掛ける。

年若き準一から見れば、理想の大人であり、憧憬の対象である。

 

 

 

*1:あかね色に染まる坂』の発売は2007年、『金色のコルダ』の発売は2003年