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創作物の感想

ゲーム『参千世界遊戯 -Multi Universe Myself-』感想

結婚という呪縛
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近未来の日本。犯罪者を追うバウンティングハンターの仕事をしているトモエ・ナカハラは、カルト教団の殲滅対応中に犯人を逃がしてしまう。並行宇宙にいるもうひとりの自分・中原静の命が狙われていると知ったトモエは、その世界へ向かうが……。

HolicWorks系列の乙女ゲームブランドgirls dynamicsより2013年12月27日に発売。

並行宇宙の移動が可能となった近未来を舞台に、ハンターの主人公が陰謀を暴く18禁乙女ゲーム

 

キャッチコピーは「宇宙を賭けたネオヒロイックオペラ」。

そのコピーの通り武闘派ヒロインが活躍する宇宙活劇(スペースオペラ)を志向した作品で、アクションシーンに重点が置かれているのが特徴。主人公も攻略対象も戦闘に長けたキャラクターたちで、全編に渡ってバトルアクションが繰り広げられる。

その反面、心理描写や恋愛描写の掘り下げは浅く、キャラクターの肉付けは薄い。さらに、舞台を近未来に設定しておきながら、登場キャラクターの価値観は旧弊である。結婚に固執する攻略対象はその最たる例である。どれほど科学技術が発展しても、人間は結婚の呪縛から抜け出せない。峻厳たる事実が突きつけられる乙女ゲームである。

 

主人公のトモエ・ナカハラ(演:波奈束風景)は二十代半ばの女性。

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身長165センチ、体重54キロ前後。肉感的なデザインのキャラクターで、下着姿の立ち絵もある。性格はさばさばしており、恋愛も手慣れている。男性と寝ることに躊躇いがなく、一夜を共にした後も甘いムードに浸らずに頭を切り替えるタイプ。口調はやや高慢だが、人を思いやる優しさも持ち合わせている。

 

 

プレイ順は、オライオン→フェリクス→ライコウ

 

①オライオン・ドレッドノート(演:鳩マン軍曹)

イギリス人。身長187センチ、体重83キロ。イギリス陸軍、外人部隊民間軍事会社(PMC)を経てハンターに。

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オライオンの仇敵と戦うルート。

民間軍事会社在職時に、同僚に殺されかけた過去を持つオライオン。そのトラウマに苦しんでいた彼だったが、トモエと力を合わせて、仇を討つ。事件解決後、トモエを連れて故郷へ帰国し、結婚式を挙げる場面でエンディングとなる。

 

トモエの活躍が描かれるルートだが、エンディングでは結婚に収束し、暗澹たる現実が待ち受ける。妻となったトモエは純白のウエディング衣装を纏い、夫のオライオンは婚姻を「入籍」と表現し、家族への挨拶や結婚式、子作りに拘泥する。トモエのような自立した女性であっても家庭や子育てを押し付けられるのである。エンディングの「トモエとオライオンの疲れ切った」結婚式スチルは今後の家庭生活の暗示である。

 

 

②フェリクス・ジョフロワ(演:ハヤテ迅)

フランス人。身長160センチ、体重60キロ。

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フェリクスの復讐に手を貸すルート。

天才科学者を輩出するジョフロワ家はとある人物の陰謀に巻き込まれて壊滅した。ジョフロワ家の生き残りであるフェリクスは一族の仇を討つために活動していた。事情を知ったトモエはフェリクスと共に陰謀に立ち向かう。

 

トモエとの初対面では敵として登場するフェリクスだが、性格は素直で真面目。トモエに対しても真っ直ぐに好意を向ける。

 

 

ライコウ・ナカハラ(演:竜ヶ崎要)

トモエの兄。身長178センチ、体重75キロ。剣術の天才と言われていたが、数年前に両親を惨殺し、失踪した。

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フェリクスルートから分岐。トモエの兄・ライコウと中原静の兄・吾妻(演:竜ヶ崎要)の因縁が明らかになるルート。

血の繋がった妹・トモエを愛するライコウ。15歳のときには「俺が一族を継ぐならば、トモエを娶る」と両親に宣言する程に強烈な執着を見せる。ついには両親を殺害するという暴挙に出たライコウは、ジョフロワ家の導きで並行宇宙へ跳躍し、もうひとりの自分・吾妻に出会う。ライコウと同じく、妹を愛する吾妻はある計画を企てていた。ライコウは吾妻の計画に巻き込まれることになるが……。

 

トモエとライコウ、静と吾妻。

二組の兄妹の悲劇を描くシナリオ。

妹への想いに苦しむ兄たちに対し、妹であるトモエと静は兄の執着を振り切って自立しているのは皮肉である。頼もしいトモエと優秀な静。妹たちと比べると、弱さを露呈する兄たちは情けない。ライコウとの恋愛イベントが発生しないGOODENDでは、静との別れと永遠の友情に焦点が当てられ、ライコウは蚊帳の外である。