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創作物の感想

ゲーム『夢をもう一度 幸福の風』感想

「いつかこれが不要になる日まで、あなたに花束を贈り続けることを誓いましょう」

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佐々木瞳は外資系の広告代理店「メディアグロー」の営業課に所属する会社員。営業課では新しいプロジェクトに向けて準備が進められていたが、大手広告会社「黒宣堂」に次々とクライアントを奪われてしまう。瞳と同僚の秋元健二は「黒宣堂」に対抗するために設立された新部署に配属されるが……。

美蕾より2006年11月9日発売。2006年発売の『夢をもう一度』と続編『夢をもう一度 幸福の風』の二作同梱版。

現代日本を舞台に、社会人の恋を描く18禁乙女ゲーム。公式ジャンル名は「恋愛アドベンチャー」。

 

主人公の佐々木瞳は28歳、外資系の広告代理店「メディアグロー」に勤める会社員。

やり手の女性営業マンとして活躍している彼女は、シングルマザーの母に恩返しをするために高校卒業と同時に入社し、庶務の雑用係から営業部へと昇り詰めた経歴の持ち主。学歴や年齢、性別から色眼鏡で見られることも少なくないが、実力と努力が認められて、現在では営業部の欠かせない人材として頼りにされていた。

一姫真矢部長(演:浜五郎)を迎えた営業部では只今新しいプロジェクトに向けて準備中。ところが、大手広告会社「黒宣堂」に次々とクライアントを奪われる事件が発生する。瞳は「黒宣堂」に対抗するために急遽設立された新部署に配属される。その部署には、瞳に熱烈なアプローチをかける同僚の中田正義(演:鳥取砂丘)や、どうしても性格が合わない秋元健二(演:森上ショウ)も所属していた。

さらに、訪ねていったクライアントで「黒宣堂」の営業課長を名乗る男、相原貴一(演:上田康裕)と出くわし、宣戦布告を受けてしまう。

 

プレイ順は、秋元健二→相原貴一。

 

 

①秋元健二(演:森上ショウ)

外資系広告代理店「メディアグロー」の会社員。営業部所属。瞳の同僚。

基本的に女性に優しいが、仕事の面では女性を軽視しており、女性が男性の上に立つことが許せない。めきめきと頭角を現してきた瞳のことも良く思っておらず、何かといえば嫌味を言う。

 

「黒宣堂」に対抗するために設立された新部署に配属された瞳と秋元。新部署の仲間は、課長(演:上田康裕)、同僚の衛藤今日子(演:本山美奈)、中田正義、白鳥餡子(演:佐々部愛華)、といった気心の知れたメンバーだった。ところが、秋元は彼らを「使えない連中」と見下し、当たり散らす。

秋元の攻撃性は「黒宣堂」にクライアントを取られた悔しさに因るものではないか。同僚の性格を熟知している瞳は、「あなたを助ける」と秋元に申し出る。

「ふざけるな!どうしてあんたなんかに俺が助けてもらわなきゃなんないんだよ!」

自尊心の高い秋元は、瞳からの幇助を拒否する。瞳の力を借りるということは、すなわち自身の能力が瞳より劣っていることを認めることになるからだ。

しかし、仕事において私情は抑え込まなければならない。秋元は渋々瞳の助力を得て、コンペの準備を始める。深夜まで残業し、一緒に営業先を回るうちに、秋元の心に変化が訪れる。

 

徐々に態度が柔和になった秋元。そんな折、瞳と秋元は営業先で「黒宣堂」の営業課長である相原貴一と出会う。相原こそが秋元のクライアントを奪った人物であった。感情的で粗野な秋元とは対照的に知性的で優美な相原は、女性の社会進出も認めており、瞳に移籍を持ち掛ける。瞳は断るものの、その後も相原は瞳に声を掛ける。

相原から瞳を連れ戻した秋元は告白する。

「お前なんか……お前のことなんか、大嫌い……だったよ」

女性で、年若く、学歴も劣る瞳に負けるのが悔しかった。だから、瞳が嫌いだった。

これまで抱いていた感情を吐露し、瞳への気持ちが好意に変わったことを告げる秋元。瞳は秋元の気持ちを受け入れる。

 

恋人になった瞳と秋元は今日も二人で営業先を回る。「黒宣堂」との戦いは、コンペを機に盛り返しつつあった。

 

 

②相原貴一(演:上田康裕)

26歳。大手広告会社「黒宣堂」の営業課長。黒髪で眉目秀麗な美青年。

 

営業先で出会って以来、幾度となく瞳に接触する相原。彼は瞳に「黒宣堂」への移籍を持ち掛ける。

相原のアプローチに折れた瞳は、ディナーの誘いを受ける。乗り気ではなかった瞳だったが、二人きりで話すうちに、知的で優秀な彼に好感を抱く。さらに、相原は薔薇の花束を用意していた。

「花を見れば、あなたは今夜のことを嫌でも思い出す」

「いつかこれが不要になる日まで、あなたに花束を贈り続けることを誓いましょう」

薔薇の花言葉は「愛情」。相原は瞳が心を開く日まで花を贈ると誓う。

他社の人間だからと距離を保つ瞳だったが、その後も相原は瞳の前に姿を現す。

「あなたがほだされるのが先か、私が諦めるのが先か、根競べです」

相原の誘惑に乗るか、相原を諦めさせるか。これは瞳と相原の遊戯である。

いつしか相原の訪問を楽しみに思い始めた瞳だった。

 

 

同僚の秋元。

競合他社の社員である相原。

仕事の上ではライバルである二人との恋の駆け引きは、甘く、スリリングである。