体験版感想
2020年・2021年発売予定ゲーム体験版プレイ感想
・『痴者の夢』(succulent)
2020年12月30日発売予定。18禁同人ゲーム。
高村のどかは恵まれない家庭環境で育った女子学生。ある雨の日、のどかは地元でも有名な豪邸に一人で暮らしている男一条正宗と出会う。無職の正宗は、交通事故で死亡した両親の遺産を相続し、のんびり暮らしていた。のどかは正宗と親しく会話を交わすようになる。
夏休み。のどかは正宗の家に押しかけるが……。
機能不全家族で育ち、学校にも居場所がない少女高村のどか(演:星鹿りえ)。
ネット依存の無職男一条正宗(演:青島刃)。
埋められない寂しさを抱えた二人が、ひとつ屋根の下で暮らす物語。
久々の青島刃さんの出演作ということでプレイした。
青島さん演じる正宗は、尊大な口調で屁理屈を捏ね回す男。現状を直視したくないが故に他者を見下し、自己を正当化する。
自称小説家で脳内では傑作が完成していると言い張るが、実際に執筆することはできない。何者かになりたいという願望を持ちながら、現実では何者でもない男だ。
はたして正宗は状況を打破できるのか。あるいは、のどかと共に堕ちていくのか。目が離せない。
・『スロウ・ダメージ』(Nitro+CHiRAL)

2021年2月25日発売予定。18禁BLゲーム。
近未来の日本。日本の一大カジノ・リゾートとして開発された特別行政区「新神海」に暮らす青年トワは、人の心の奥底に押し込められた爆発寸前の欲望をモチーフにして油彩画を制作していた。
ある日、「新神海」で吸血鬼事件が起きる。医者タク、タクの病院の手伝いをしている青年レイと共に、トワは吸血鬼事件を追うことになるが……。
Nitro+CHiRAL五作目となる本作。
ストーリー・キャラクター設定・都市の設定・背景スチル等、随所に旧作を彷彿とさせる要素があり、Nitro+CHiRALの作風が存分に味わえる作品に仕上がっている。
体験版範囲で描かれるストーリーと街の風景は、前作『DRAMAtical Murder』共通ルートに酷似している。
『DRAMAtical Murder』では、総合リゾート地「プラチナ・ジェイル」を有する東江財閥が事件に関与していた。本作『スロウ・ダメージ』では、カジノの民間運営業者の鷹郷組がカジノ・リゾート「新神海」を支配している。東江財閥のように、鷹郷組も吸血鬼事件に関わっているのだろう。
主人公トワ(演:柊三太)の能力は、『DRAMAtical Murder』の主人公蒼葉の能力「暴露」に似ている。蒼葉と同様に、トワもその能力を使って攻略対象の過去と心を暴くと思われる。
Nitro+CHiRAL恒例ストリートファイトは今作でも健在。
『咎狗の血』の「Bl@ster」、『DRAMAtical Murder』の「リブスティーズ」に続いて、本作においても、若者たちがストリートファイトを行っている。今作のファイト枠はオネエ青年レイ。
旧作と差別化されている点は、目と口が動く立ち絵と難易度の高さ。
瞬きする目と台詞に合わせて開閉する口、いわゆる目パチ口パク。乙女ゲームでは時々見かけるが、BLゲームでは珍しい。
新しい演出だが、目パチ口パクのために立ち絵の美しさが損なわれている。乙女ゲームの目パチ口パク立ち絵が嫌いな身としては、オフ機能が欲しいところだ。
攻略の難易度を挙げているのは、Nitro+CHiRAL初のシステムとなる「探索パート」「心理パート」。
「探索パート」では、10箇所を移動(体験版範囲)し、その場にいるキャラクターと会話をする。
攻略対象と出会えるのは、〈むらせクリニック〉と〈羽子板通り(D地区)〉。その他の場所には、モブキャラクターがいたり、誰もいなかったりする。
キャラクターとの会話では、〈NEGATIVE〉と〈POSITIVE〉の選択肢からトワの言動を選ぶ。〈NEGATIVE〉を選ぶと、トワはキャラクターに否定的な反応を返す。〈POSITIVE〉を選ぶと、トワは肯定的な反応をする。また、適切な選択肢を選ぶと〈インスピレーション〉を手に入れることができる。
「心理パート」では、相手との会話を行い、目的を達成することでストーリーが進行する。
体験版では、相手の〈幸福(EUPHORIA)〉を満たすことが目的となる。〈幸福(EUPHORIA)〉を満たした状態で、〈狂気(MADHOUSE)〉が一定以上まで上がると、ストーリーが分岐する。
相手の〈幸福(EUPHORIA)〉と〈狂気(MADHOUSE)〉を増減する方法は、〈NEGATIVE〉と〈POSITIVE〉の選択肢から適切な答えを見つけることと、「探索パート」の会話で手に入れた〈インスピレーション〉の中から適切な台詞を使用すること。
簡略にまとめると、
「ストーリーパート」でメインストーリーを読む
↓
「探索パート」で攻略対象がいる場所を探す
↓
選択肢で攻略対象の好感度を上げる
↓
「探索パート」でモブや他の攻略対象を探す
↓
選択肢で〈インスピレーション〉を手に入れる
↓
「心理パート」で正しい選択肢を選び、適切な〈インスピレーション〉を用いて、目的を達成する
上記の流れでプレイする必要がある。
従来のBLゲームのシステムに慣れている身からすると、大変面倒かつ難しいシステムだ。「探索パート」と「心理パート」をスキップして、「ストーリーパート」だけ読み進められる仕様であることを願いたい。
また、「探索パート」「心理パート」に入ると、自動テキスト送りが解除され、パートボイスになる。
このパートボイスが問題で、「ああ」や「ふん」など相槌だけにボイスを入れられると、集中力が削がれる。フルボイスにするか音声皆無にするか白黒つけてほしい。
カットインの演出含めて、まるでソシャゲのような作りである「探索パート」「心理パート」。このシステムを楽しめるか否かが、本作の鍵だろう。