路傍の感想文

創作物の感想

BLゲーム簡易感想 3

記憶の整理も兼ねて触れてきたゲームをプレイ順に振り返ってみました。

個人的な思い出が主、ネタバレやネガティブな事項も書いておりますので、ご注意ください。

 

 

 

No.31『東京24区』(HolicWorks)2020年

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代議士たちがテロ事件を調査するミステリゲーム。主人公総受け。

制作側の政治イデオロギーが色濃く反映されている作品。発売日前後には、原画家自民党員を支持し、マスコミを批判するツイートをされていました。

 

作品を貫くのは、資本家階級が正義、労働者階級は悪という二項対立。

主人公と攻略対象は資本家。一方、テロ事件の主犯は労働運動を経て政界に出た人物、実行犯は無国籍のキャバクラ嬢です。

車がテロ事件に巻き込まれると、労働者階級である雇われ運転手は死亡し、同乗していた資本家の攻略対象とその父親は生き残ります。生死を左右するのは、社会的地位と社会的資源の有無でした。

 

 

No.32『篠田新宿探偵事務所 唐獅子牡丹』(HolicWorksDISC)2018年

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覚醒剤の流通ルートを探るミステリゲーム。主人公総受け。

事件の真相より、毎回テキストの末尾に現れるピタパンの存在が気になって仕方がありませんでした。フルコンプリートしてもピタパンの謎は解けません。

 

 

No.33『PigeonBlood』(PIL/SLASH)2014年

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鬼神を祀る旧家で起きた怪事件を巡るホラーサスペンスゲーム。主人公総受け。

共通ルートは道徳心が缺乏した大学生たちに翻弄される心理サスペンス。個別ルートは血飛沫が散る惨劇の様相を呈します。

橘裕也(演:髭内悪太)ルートのみプレイしましたが、暴力的な裕也に対して安易に反省を促さず、陳腐な展開に逃げなかった点は評価できます。

 

 

No.34『神無ノ鳥』(すたじおみりす team L←→R)2002年

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『Laughter Land』(郎猫儿、2006年)を手掛けたライターがシナリオを執筆したファンタジーゲーム。

男性×男性の恋愛物語の背景に隠されているのは、性暴力を受けて、父親が分からない子どもを出産した障碍者の女性の悲劇。女性の妊娠と出産がBLを促す因子として機能しており、『Laughter Land』と同じく、女性の生物学的役割の強化が行われています。

 

 

No.35『東京陰陽師天現寺橋怜の場合~』(TYRANT)2014年

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2014年の東京で、陰陽師の主人公が依頼を解決していくゲーム。主人公総受け。

舞台は『紅色天井艶妖綺譚』(LoveDelivery、2008年)の数百年後。桜螺の縁者である桜井刑事(演:丈隆志)が登場し、九鬼鏡丞の縁者の名前も挙げられます。

 

 

No.36『スロウ・ダメージ』(Nitro+CHiRAL)2021年

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数々のゲームを起動させてきた我がwindows7が唯一敗北を喫したソフト。インストールには成功したものの、画面を立ち上げることができないのです。もうひとつのPCであるwindows10は光学ドライブが内蔵されていないのでそもそもソフトを読み込めませんし、このままプレイできずに売却か……と、腹を括ったのですが、救済策が用意されていました。結果的に初めてwindows10でプレイしたゲームとなりました。

 

世間では高評価を得ていますが、オネエ系男性がオネエを辞めるエンディングも中年男性が無職になるエンディングも称賛し難く、目パチとマップ移動も肌に合いませんでした。

真相ルートは見ていませんが、おそらく主人公は母と妹の死に関与しているのだろうと目星をつけています。

 

 

No.37『桜雪』(パペット)2004年

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青島刃目当てに軽い気持ちでDL版を購入したのですが、2021年一番のヒット作に。

風水と科学技術が交差する近未来の東京を舞台に、軍人の権力闘争を描く作品。主人公も攻略対象も傍若無人で度し難いキャラクターですが、周回プレイを通して、現在に至る来歴とその心情が玉葱の皮を剥くように明かされていきます。物語の同伴者となるのは、先割れスプーンさんと平井達矢さんの熱演。先割れスプーンさん演じる鳥生七尾の再起と平井さん演じる久世芝の悪業が物語を駆動させる歯車となり、カタルシス溢れるエンディングへ導きます。

 

 

No.38『ディストピアの王』(PIL/SLASH)2021年

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『Paradise』(PIL/SLASH、2017年)のライターがシナリオを、『オメルタ』(花梨シャノアールオメガ、2011年)の原画家が原画を手掛けた近未来バンドゲーム。主人公総受け。

 

「楽園」である無人島を訪れて、異なる価値観と出会う『Paradise』 が異郷訪問譚であるとするならば、『ディストピアの王』は楽園喪失の物語。華やかな芸能界には影が潜み、自由の象徴であるZ地区は貧困と犯罪が蔓延るスラム街であり、生まれ育った場所は偽りの楽園でした。

現実を認識した主人公は混沌の中に投じられますが、自己のリアリティの獲得によって、世界と自身との関係性を再構築します。

 

 

No.39『メイド★はじめました~ご主人様のお世話いたします~』(VividColor)2007年

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労働者の権利を踏み躙る雇用者たちの物語。なかでも自ら進んで幼馴染みを縛る枷となる東久世珊瑚(演:空野太陽)の悪辣さについては一考に値します。己の夢の実現のために、幼馴染みの使用人を無給労働へと追い込む珊瑚の策略は、BLゲーム界でも類を見ない醜行でした。

 

お目当ては黒瀬鷹×平井達矢の共演。黒瀬さん演じる苅野健太郎と平井さん演じる津田圭一の個別ルートには頬が緩みました。

 

 

No.40『Artificial Mermaid~SILVER CHAOS 2~』(VividColor)2004年

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近未来を舞台に、特殊部隊の隊員たちの戦いを描くSFゲーム。

各ルート通して描かれるのは、聖教を名乗る団体が、邪教と称される異教徒を排斥する過程。劇中の教義を見る限り、聖教と邪教の線引きは曖昧で、その違いは「信徒が国家中枢を担う立場にあるのか否か」でしかありません。

 

 

No.41『玉響』(Palmiers)2006年

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蛇神信仰が残る山村を舞台に、因習に縛られる男性たちの葛藤を描く作品。

本作の興味深いところは、主人公が✕✕✕✕✕✕(ネタバレのため伏せ字)であるのにもかかわらず地味な容姿である点。創作物における✕✕✕✕✕✕と言えば、美形か醜悪かに二極化しているものですが、本作の主人公はそのどちらにも振り切っていない、いたって普通の容貌です。新鮮なキャラクター設定であり、プレイヤーを欺く巧妙なトリックとも言えるでしょう。

 

主人公が誰の手を取るのかによって友人の古川俊一(演:羽多野渉)の相手が確定するシナリオは、ともすれば余り者同士がくっついたように見えますが、その切なさこそが本作の要。主人公に選ばれなかった者は、脇役の身分に甘んじねばならない。取り残された者たちによる傷の舐め合いが痛々しい。お気に入りは久瀬明仁(演:成田剣)×古川俊一、神代遼(演:平井達矢)×古川俊一の組み合わせです。

 

 

No.42『熱砂ノ楽園』(VividColor)2010年

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VividColorの遺作。

俗世とは切り離されたハレムの奥で緩やかな自殺を図る兄アシュラフ・ルシュディ(演:高嶺悠賀)。兄の秘密を知らずに、自由に階級差を飛び越える弟ハキム・ルシュディ(演:桜ひろし)。兄弟のすれ違いが遣る瀬無い。

置かれた立場は異なりますが、アシュラフの在り方には『斜陽』の直治を思い出さずにはいられませんでした。

 

 

No.43『君の中のパラディアーム』(Chat Errant)2009年

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『桜雪』同様に、青島刃目当てに軽い気持ちで購入しましたが、こちらも忘れ難い一作になりました。

崩壊が進む世界を舞台に、為政者たる神に反旗を翻す作品。ヴァンヴェール(演:杉崎和哉)とゼフィール(演:先割れスプーン)の双子の会話がユーモアに満ちていて、プレイ中は双子が結ばれるエンディングを探していました。

 

 

No.44『学園ヘヴン BOY’S LOVE SCRAMBLE!』(Spray、プロトタイプ)2015年

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BLゲーム界の古典『学園ヘヴン』(2002年)のPSVita移植版。原作ゲームもアニメ版も未視聴ですが、BLゲームの歴史を学ぶためにプレイしました。

キャストは、福山潤さん、故川上とも子さん、櫻井孝宏さん、森川智之さん、鈴村健一さん、置鮎龍太郎さん、と懐かしい方々。プレイ中は時間が中学生時代に巻き戻されたかのような感覚に陥りました。

 

 

No.45『PSYCHIC ECLIPSE-サイキックイクリプス-』(C-Garden NEXT-B)2021年

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近未来を舞台にした全年齢SFゲーム。攻略対象は三名。

 

一ルートにつき選択肢が発生する要所は三回、各選択肢において提示される回答は三つ。つまり、3×3×3、二十七通りの可能性が考えられるわけですが、そのうちハッピーエンドであるTrueEndに到達できるのは一通りのみ。残りの二十五通りはNormalEndとなります(一通りはバッドエンドであるDarkEnd)。初回の選択肢で誤答を選ぶと、その時点でNormalEnd行きが確定するシビアなシステムとなっています。

正答も誤答も似たりよったりの内容のため、正解の選択肢が見分け難く、二十七通りの分岐の中から一通りを見つける作業は骨が折れました。

 

 

No.46『Ariard-少年アリス-』(Latte)2013年

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ルイス・キャロルLewis Carroll)の小説『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)を題材にした18禁同人BLゲーム。主人公総受け。脚本を担当した上月壱は、後に同じくアリスものである乙女ゲーム『白と黒のアリス』(オトメイト、2017年)のシナリオも手掛けました。

 

本作の主人公は、地下世界に落ちた少年アリス。白ウサギ(White Rabbit)、帽子屋(Hatter)、チェシャ猫(Cheshire Cat)、芋虫(Caterpillar)、ハートのジャック(Knave of Hearts)などお馴染みの登場人物がメインに据えられています。

 

 

No.47『GALTIA』(GRISEDGE)2015年

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四つの王国が並立する世界を舞台に、フリーランスの何でも屋の主人公が陰謀に巻き込まれるファンタジーゲーム。主人公総受け。

攻略対象五名中四名が王位に就いており、個別ルートではロイヤルパワーに寄託する物語が展開される一方、主人公自身も「外つ国から来訪した稀なる人」とされており、真相ルートでは貴種流離譚へ回帰します。

ボキャブラリーが少ない点(「俺に触るな!」と言いがち)や行為後に発熱しがちな点など、同系統の主人公たちと比較すると短所が目に余る主人公でした。

 

 

No.48『復讐帝國』(Fetish)2017年

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帝國宇宙軍の中尉が敵国の軍人たちを調教するSFゲーム。主人公総攻めですが、主人公が受け側に回るBADエンドも存在します。

 

キーワードは「肉体で籠絡」。そうは言いつつ頭脳戦になるのだろうとプレイ前は高を括っていたのですが、徹頭徹尾、肉体によるコミュニケーションのみで相手との関係を進め、勝敗を決します。心によって体を動かすのではなく、体が心を支配する。精神と肉体の逆転現象が起きた男たちの肖像をシリアスに活写します。

 

 

No.49『喰蝶花』(α-アルファ-)2006年

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「花族」「蝶族」の業を描くダークファンタジーゲーム。

 

サンプル画像の鋭利な顎を見た瞬間、嫌な予感がしたのですが、成田剣出演の文言には抗えずDL版を購入。結論から言えば、成田剣さん演じるシュナイダーと高城元気さん演じるアイビス・ベリーロードのエンディングには感心する部分もあり、プレイして損はない作品でした。

「花族」「蝶族」周縁の設定は装飾過多のきらいがあり、賛否が分かれる点でしょう。

 

 

No.50『比翼は愛薊の彼方へ~未了の因~』『比翼は愛薊の彼方へ~久遠の想~』(SandalDash)2006年~2007年

春秋戦国時代を舞台に、父王殺しの罪で国を追われた第一皇子の奮起を描く架空中華戦記。全二部作。

 

序盤にて、夢想的な第一皇子を退け、現実を見据えた第二皇子を王に迎えるべきだと確信。必然的に、主役である第一皇子陣営よりも、略奪者である第二皇子陣営に肩入れしました。

第二皇子陣営の負け戦が続く二作目は、幾度となくアンインストールしたい衝動に駆られました。

結末には絶句。