記憶の整理も兼ねて触れてきたゲームをプレイ順に振り返ってみました。
個人的な思い出が主、ネタバレやネガティブな事項も書いておりますので、ご注意ください。
No.1『DRAMAtical Murder』(Nitro+CHiRAL)2012年
人生で初めてプレイしたゲームにして、初めてプレイしたBLゲーム。
Nitro+CHiRALの名前を覚えたのは中学生のとき。きっかけは漫画版『咎狗の血』(山本佳奈作画、アスキー・メディアワークス)でした。この漫画を皮切りに、アニメ版『咎狗の血』、小説版『Lamento』(後藤リウ、角川スニーカー文庫、全二巻)、漫画版『sweet pool』(車折まゆ作画、リブレ出版、全二巻)と、中学高校を通してNitro+CHiRALのメディアミックス作品に触れましたが、ゲームコンテンツに馴染みがなかったため18歳を過ぎても原作ゲームの購入意欲は湧かず、一生手に取ることはないだろうとまで思っていました。
ところが、英国へ渡航する前日、「日本でやり残したことはないか」と思い巡らしたとき、ふとNitro+CHiRALの存在を思い出しました。調べてみると所持しているwindows7で簡単に起動できることが判明し、Nitro+CHiRAL四作目の『DRAMAtical Murder』を購入してみました。
ちなみに、『咎狗の血』は、アニメ版の主演が鳥海浩輔さんであるのに対し、ゲーム版の主演は「先割れスプーン」なる珍妙な名前の人物だったのですが、はたしてこの「先割れスプーン」氏は鳥海さんに匹敵するほどの演技力を有しているのだろうか、と疑いが拭いきれず購入に踏み切れませんでした。
今となっては信じられない話ですが、何しろゲーム自体初挑戦だったので、SAVE機能とLOAD機能の存在に思い至らず、毎回起動する度にDVDを再生するときのように最初から始めて早送りしていました。
早送りを繰り返し、初めてエンディングに到達したキャラクターはクリア(演:佐和真中)でした。
最も驚嘆したのが、常にテキストが画面に表示されており、一枚絵(スチル)や立ち絵は静止している点。まるで音声と挿絵が付いた小説のような仕様です。声優の演技は好きだが、アニメーションのような動画を観るのは苦手な自分にとって、小説を読むかの如くプレイできる本作は革命でした。現在でも静止画の紙芝居ゲームを絶対視してしまうのは、このときの感動が忘れ難いからでしょう。
No.2『sweet pool』(Nitro+CHiRAL)2008年
漫画版『sweet pool』には、主人公の姉の芹沢枝里香の回想として、以下の場面が断片的に描かれています。
両親の出会いは大学在学中。宗教学を専攻していた女子学生を、のちに父となる男子学生が口説いたのだ。二人は結婚し、長女の枝里香、長男の蓉司を授かる。父との馴れ初めを娘に語っていたある日、母親は枝里香に封筒を手渡した。この封筒の中には、蓉司に関する秘密が眠っているという……。
さて、封筒の中には、何が入っていたのでしょうか?残念ながら、封筒を開封しないまま、漫画版は連載を中断してしまいました。
『DRAMAtical Murder』でBLゲーデビュー後、長年の謎だった封筒の中身を知るべく、原作ゲームに挑んでみました。
枝里香が顔を見せると、心の中で「封筒!封筒!」とコール。今度こそ謎が解けると期待していました。
しかし、いくら読み進めてもまったく封筒の話題が出てこない。それどころか母と娘の会話シーンもありませんし、漫画版第一巻で描かれた主人公の友人の三田睦(演:空乃太陽)の過食エピソードも登場しません。原作ゲームと漫画版は別物と評しても過言ではありませんでした。
結局、全エンディングを閲覧しても封筒の中身は分からず仕舞いで、蟠りが残る結果になりました。
No.3『オメルタ~沈黙の掟~』(花梨シャノアールオメガ)2011年
出会いは、今は亡き某ショップ店頭にて。公式サイトを確認後、後日購入しました。
公式サイトを閲覧して一目で気に入ったのは、この人。
藤堂庄一郎、通称マスター。42歳(主人公のJJとは17歳差)。職業バーテンダー。攻め。声優は星乃煌児。
おじさん攻め好きには堪らないキャラクターです。
早速マスタールートから……といきたいところでしたが、ネットの攻略情報によるとマスターは初回不可*1。仕方なく初回攻略可能な三名の中から
「髭にサングラスに関西弁に年下攻めと、好きな要素が一つもないけど、主人公が受けになるのは橘だけだから」と消去法で橘陽司(演:藍斗勇輝)を選びました。まさかこんな消極的な理由で選択した橘にドハマリするとは!人生とは分からないものです。
初登場時、猿轡を噛まされ、JJに刃物を突き立てられた橘。JJの冷静な判断力と意地を張る橘の対照が光る場面ですが、橘の苦悶の声と表情が素晴らしい。その後のJJと橘の会話の応酬は軽妙で、クールなJJが橘の騒がしいペースに乱される様子も微笑ましい。このまま恋愛に発展するのかと暢気に構えていました。ところが、共通ルート終盤、橘は蛮行を犯します。予測を凌駕した状況に、JJは激怒し、プレイヤーである私は唖然としました。橘の考えが読めない。あのような仕打ちを受けてもなお、橘と行動を共にするJJの気持ちも理解できない。分からないからこそ、知りたくなる。彼らの軌跡を丹念に読み進めました。すると、段々橘がいじらしく見えてくるのです。
これまで濡れ場は常に読み飛ばしていたのですが、本作では橘の一挙手一投足が見逃せず、濡れ場も通読してしまいました。サングラスを外した素顔の可愛いことといったら! 睦言のなんとポエティックなことか!相手を気遣う優しさといったら!橘の言動全てが愛らしく、情感に訴えかけてきます。起承転結の狭間に差し込まれた濡れ場は、性的アピールの場であると同時に、彼の人間性を雄弁に映し出す場面でもありました。
濡れ場にこのような意味があるとは目から鱗。長らく疑問であった「創作物に濡れ場は必要なのか」問題が氷解した瞬間でした。
マスタールートは、おじさん攻めの要点を押さえたシナリオ。こちらも満足できる内容でした。
橘ルートとマスタールートを終えると、すぐさま続編『オメルタCODE:TYCOON』、橘編とマスター編のドラマCD、キャラクターソングCDを買い求めました。橘編ドラマCD『キャンディー・ブラック・マーケット』では、本ルートでは明かされなかった二人の関係が暴かれ、嬉しい誤算に感激*2。さらに二人の過去を辿るため、PSPとPSVitaの差異も分からないのに、PSP移植版『オメルタ~沈黙の掟~ THE LEGACY』とPSVita移植版『オメルタCODE:TYCOON戒』も購入しました(PSVitaでPSPソフトを起動できないことに本気で怒っていました……)。
本編と続編を全クリア後は、他の攻略対象のCDも購入。店舗特典を手に入れるためにソフトを複数買いし、『オメルタ』のSSと記事が掲載された雑誌『Cool-B』のバックナンバーも買い揃えました。『オメルタ』の新しい物語を知る度に、登場人物は別の顔を見せ、血の通った人間として立体化していくようでした。
最も好きなBL作品は何かと問われたら、私は間違いなく『オメルタ~沈黙の掟~』のタイトルを挙げます。
No.4『オメルタCODE:TYCOON』(花梨シャノアールオメガ)2013年
『オメルタ~沈黙の掟~』の続編。
橘×JJ、マスター×JJのラブラブを見るぞ!!と意気込んで起動したら、冷や水を浴びせられたゲーム冒頭。主人公の心身も心配だが、橘とマスターの心境は如何許りか……!!いつJJが暴露するのか、橘は我慢できるのか、マスターの心臓は保つのか、心配半分期待半分で、初回は橘ルートからプレイしました。
冒頭におけるJJの悲運は橘の金遣いの荒さに遠因があると判明した際は、怒りが湧きました(ルート毎に理由は異なります)。
「有り金全てをギャンブルで使い込む」を笑い事にしている場合じゃない。でも、憎めないのが橘という男なのでしょう。
No.5『マスカレード~地獄学園SO/DO/MU~』(PIL/SLASH)2006年
主人公も眼鏡、攻略対象二名も眼鏡。濡れ場多め。
雑誌『Cool-B』の読者抽選プレゼントで当選しなければ、一生プレイしなかったであろうゲーム。この作品に出会わなければ、乙女ゲームをプレイすることも声優の青島刃さんの魅力に気が付くこともなかったので、個人的な分岐点となったゲームです。
本作の特色は、複数の結末を用意できるゲームであるからこそ成立する多層的な構成。
主人公の学生、沼田ヒロシ(演:空野太陽)と攻略対象たち(学生二名、教師一名)の恋愛を描く三ルートを終えると、開かれるのは犯人の心理に迫る二ルート。主人公は退場し、主役を演ずるのは、学校関係者ではない社会人二名。この視点交代によって学生側では知り得ない事実が浮かび上がります。全ルートクリア後に解放される大団円ルートでは、沼田ヒロシが主人公の座に復帰し、各ルートで得た情報を整理しながら真相を解明します。小説では表現し難い周回プレイ前提の謎解きとなっており、ゲームシナリオの自由性と可能性に脱帽しました。
声優陣の演技力も卓越しています。とりわけ尊厳を破壊された際の青島さんの演技には、目を瞠るものがありました。
青島さんと言えば、『オメルタ』の劉漸役に代表されるような高圧的な強者のイメージがあったのですが、本作で演じるのは無力な被害者。
親の威光を傘に来た男が、矜持を折られ、屈する。その絶望感と滑稽さをやや高めの声で表現されています。
この青島さんの弱々しい演技がツボにはまり、本作以降、青島刃出演作品を追いかけるようになりました。
No.6『神様(仮)路地裏繚乱編』(easy-peasy)2013年
神様アズミと裏社会の男たちの攻防を描くW主人公制ゲーム。別軸リバを完備し、プレイヤーが主人公と攻略対象の攻め受けを決定できます。
眼目はオヤジアズミ(演:森上ショウ)ルート。包容力のあるオヤジアズミを目の前にすると、露悪的に振る舞う男たちは怯懦な内面を曝け出します。
BLゲームの攻略対象全員を好きになることは滅多に無いのですが、珍しく攻略対象三名全員を気に入りました。オヤジアズミ×攻略対象たちのルートは幾度プレイしても心が温まります。
No.7『オメガヴァンパイア』(花梨シャノアールオメガ)2016年
ヴァンパイアと人間が共存する近未来の横浜を舞台に、人間から半ヴァンパイアに変化した学生が夜の世界へと足を踏み入れるバトルアクションファンタジー。
攻略対象は四名ですが、個人的にはハインリヒ・シェレンベルク(演:黒瀬鷹)一強でした(なお人気投票では最下位)。
『オメルタ』で鍛えられたのか、ハインリヒルートにてとある場面を迎えたとき、「あ、これ橘で見たのと同じだ!」と、手を叩いて喜んでしまいました。花梨ゲーの業を背負った男たちはどうしてこう目が離せないのでしょうか。
頑健な身体と権力を誇示しながら、その実は弱者であるハインリヒ。仄かな恋情のために全てを失った惨めさと、神の光を喪失してもなお、十字架を下げ、信仰を捨てられない哀れさ。烈烈たる言動の狭間に見え隠れするのは、一人の男の哀切です。
No.8『咎狗の血』(Nitro+CHiRAL)2005年
ゲーム版でも鳥海浩輔さんが主役を務めていたら良かったのに……と躊躇しながらサンプルボイスを視聴したある日、世界の真実を知りました。
漫画版とアニメ版の記憶が残っているため、原作ゲームはおじさん攻めの源泉(演:一条和矢)ルートのみプレイしました。妻子を失った男はやはり良いものです。
No.9『修業旅行~古都迷走地図~』(MERRY BOYS)2005年
学生たちが京都を駆け巡るミステリゲーム。別軸リバあり。一つの事象に対し、複数の回答が用意されており、ルート毎に到達する真相が変化する構成が斬新でした。
攻略対象の中では、女好きで明るい性格の滝太一(演:坪井智浩)と主人公の南部章平(演:水島大宙)の遠慮のない間柄が眩しい。事件を追う道中で更に強固になる二人の友情。滝と南部はずっと仲間でいられると信じたい。
No.10『STEAL!』(Spray)2009年
怪盗養成学園を舞台に、特殊能力を持つ学生たちが任務に当たるゲーム。主人公総受け。クラウディオ・智久・ロッティ(演:三浦祥朗)と土屋太陽(演:笹田貴之)ルートのみプレイしました。
お目当てはクラウディオでしたが、「数学なんて簡単」の発言が気に入らず、彼への興味が霧散。頭脳明晰設定は、鬼畜眼鏡枠の桐生崇征が担うべきであり、夜遊び担当のクラウディオには不要でした。