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ゲーム『Photograph Journey~恋する旅行・宮城編&沖縄編~』沖縄編感想

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高校生になるまで、父親の仕事の都合で転校を繰り返してきた葉山花穂。ある日、二年前に沖縄で出会った真志喜小次郎から手紙が届く。それをきっかけに、花穂の家にホームステイをしているイギリス人のリチャード・アルバーンと共に沖縄へ行くことになるが……。

株式会社アスガルド乙女ゲームブランドhoneybeeより2014年8月29日に発売。

日本各地の男性との恋を描く全年齢乙女ゲーム『Photograph Journey~恋する旅行~』シリーズ第一巻(PC)。公式ジャンル名は「1通の手紙から始まる恋旅AVG」。

沖縄編では、現代の沖縄を舞台に、再会から始まる恋を描く。

 

立秋葉高校二年生の葉山花穂は、父親の仕事の都合で転校を繰り返してきた少女。現在は、東京の一軒家で両親とホームステイ中の留学生リチャード・アルバーン(演:水島大宙)と暮らしているが、転校先で出会った男の子たちを忘れたことはない。

とりわけ思い出すのは、中学三年生の夏休みに沖縄で一緒の時間を過ごした少年のこと。

 

そんなある日、沖縄から手紙が届く。

送り主は、沖縄県立美ら水産高校二年生の真志喜小次郎(演:日野聡)。二年前の沖縄で出会った少年であった。

現在は身長182センチまで成長し、サーフィンが趣味だという小次郎。添えられた写真には、美しい沖縄の海が写っていた。

好奇心旺盛なリチャードが興味を持ったこともあり、花穂はリチャードを連れて沖縄を訪れることに。

 

「俺は……あまり話すのが得意じゃないから

 いつもお前を不快にさせているじゃないかと不安なんだ」

二年振りに再会した小次郎は口下手で無骨な青年だった。女性に慣れていない小次郎だが、彼なりに気遣いながら花穂(とリチャード)を案内する。首里城、美ら海、うちなーグルメ、水族館……。小次郎との観光スポット巡りは、花穂の胸に忘れかけていた熱を蘇らせる。そして、小次郎も花穂への想いを胸に秘めていた。

「2年間、お前への想いが消えた事はない」

「だからきっと俺は、これからも

 お前を好きでいるんだと思う」

出会ったときから今に至るまで。沖縄と東京、距離が離れていても。

ずっと好きだった。

旅の終わりで、小次郎は想いを告げるのだった。

 

エンディングは四種類。

Ending1「オーシャンウェディング」

高校・大学を卒業後に沖縄で挙式。

Ending2「一緒に過ごす僅かな時間」

修学旅行で東京に来た小次郎との再会。

Ending3「彼と私の新しい関係」

東京の自宅へ帰宅後、すぐに電話する二人。

Ending4「蕾のままの想い」

想いを心に秘めたまま、東京へ帰宅。

Ending4を除いて、いずれも恋愛が成就する内容である。4に関しても、再会を予感させる結末となっており、明確なBADは存在しない。

 

物語は「両思いだった男女が再会し、好意を再確認する」というプロットを淡々となぞる。プレイヤーの予想を裏切るような波乱万丈な展開は待ち受けていない。花穂の両親は沖縄旅行を快諾し、小次郎の弟たちは花穂に懐く。恋の障害となる存在は徹底的に排除されている。悪意が介入する隙もない。

唯一懸念される存在は旅の同行者であるリチャードだが、彼はグルメや観光スポットを紹介する際の賑やかし要員に徹しており、二人の恋路には一切関与しない。それどころか、何かと言うとすぐに姿を消し、花穂と小次郎を二人きりにさせる。恋のシチュエーションを作るために用意された人物である。

どこまでも優しく穏やかな作品世界はぬるま湯のようである。

 

主人公の花穂は自己主張が少なく、他人から影響を受けやすい性格。水族館で迷子になって泣くなど、幼稚な面も見受けられる。同い年にもかかわらず、小次郎が花穂の保護者の役割を演じるのは、花穂の性格に適合する役を無自覚に選択した結果である。その点では、釣り合いが取れた二人であった。