記憶喪失の少女イヴは光と闇の教会クレプシドラを訪れる。其処は死者の生前の善行と罪業を見極めて、魂の行き先を裁定する裁判所だった。イヴは人の心を読み取る「ハートシーク」の能力を用いて、死者の魂を天国へ導く手伝いをするが……。
有限会社イーアンツの傘下ブランドリボンマジックより2008年4月29日発売。
人が死後に受けるとされる「私審判」(The Particular Judgment)を題材に、幼い少女と教会の人々の交流を描く全年齢乙女ゲーム(PC)。
舞台は現代の日本。
電車の事故で死亡した会社員水先圭二(演:川田紳司)の魂を追いかけていた記憶喪失の少女イヴ(演:いのくちゆか)は、光と闇の教会クレプシドラに辿り着く。其処は死者の生前の善行と罪業を見極めて、魂が向かうべき場所を裁定する裁判所だった。
水先に結審が下されるのは七時間後(「七」は旧約聖書『創世記』における天地創造の日数である)。
イヴは人の心を読み取る「ハートシーク」の能力を用いて、水先の魂を天国へ導く手伝いをするが……。
水先が死亡し、魂の行き先が決定するまでの一日の出来事を描く本作。
共通ルートでは、マップ上からイヴの移動先を決定し、攻略対象との仲を深めつつ、水先を助けるためのキーワードを探す。
行動時間は午前十二時から午後五時までの五時間。三十分刻みで移動する。
定刻を迎えると、裁判が開廷。イヴは見つけたキーワードの中から適切な回答を選択する。選択肢の組み合わせが正解であれば、水先の天国行きが確定するが、不正解であれば地獄行きとなる。
水先が去った後に、攻略対象とイヴとの短い会話が挿入されて、エンディングとなる。
水先の天国行きイベントは共通テキスト。
バロとチェンバレンルートでは、イヴはお目当ての男性のところに入り浸り、水先のために行動を起こすのは午前十二時と午後五時の二回のみなのだが、
水先「ありがとう。忘れないよ。ずっと俺の後をついて……心配そうに見守っていてくれた小さな女の子の事を……」
と、水先はどちらのルートにおいても感謝の言葉を述べる。共通テキストとはいえ、水先の件を忘れて遊び呆けていたイヴを「心配そうに見守っていてくれた」と評するのは、いささか無理がある。
攻略対象との個別エンディングは、いずれも恋愛に発展しない状態で終了する。
プレイ順は、バロ→チェンバレン。
①バロ(演:成田剣)
闇の教会の墓守(カロン)。
コミックリリーフの役回りを担うキャラクターであり、劇中では道化師に徹している。
バロエンドはコミカルな結末。
バロから「将来、キミと一緒に墓穴に入りたい」と書かれた手紙を受け取ったイヴ。不幸の手紙かもしれない。イヴがバロを問い質すと、バロの認識ではラブレターだったことが判明する。
光の教会の牧師(グラマテ)。老齢の男性。眼鏡をかけている。
なお、製品パッケージのキャラクター紹介では「教会と、アルジェンとディスに心からの忠誠を誓う牧師。住人たちからの信頼も厚い神父」と記載されており、牧師なのか神父なのか判然としない。劇中の描写を鑑みるに、カトリック教会の神父であると推定される。
イヴと魔族デヴィン(演:萩原秀樹)がチェンバレンの元を訪れると、孫を相手にするかのように物語を語ってくれる。
一話目は『子供と家庭のための童話集』の「赤ずきん」。
二話目はアンデルセンの短編小説「マッチ売りの少女」。
三話目は『子供と家庭のための童話集』の「星の銀貨」。
四話目は『子供と家庭のための童話集』の「白雪姫」。
五話目はアイソーポスの寓話「コウモリとイタチ」。
チェンバレンエンドは告解する結末。
教会を訪れたイヴは、懺悔を捧げるチェンバレンの姿を目にする。
チェンバレン「私が犯した罪は例え神が赦しても…決して赦される事が出来ない大罪ですから…」
チェンバレン「永久に赦される事はないでしょう…」
チェンバレン「わたくしという存在が…いつか消えてなくなるその時まで…」
チェンバレンは、赦されぬ罪を背負っていることを告白する。
その罪の具体的な内容までは語られないが、イヴは己を責めるチェンバレンに優しく語り掛ける。幼い少女の声は、まるで聖母マリアのように慈愛に満ちている。
イヴ「神様も、世界も、チェンバレンが思うほど、だれもチェンバレンをせめたりしてやしないの」
イヴ「いつかきっと…自分をゆるしてあげられるひがくるって、私いっしょうけんめいおいのりするし、やさしいチェンバレンをしんじてる…だから自分にも…ほんのすこしでいいから、やさしくしてあげて、チェンバレン」